地裁、暴動罪の公判で無罪判決 警察官の供述を無条件是認できないと裁判官

香港での容疑者を中国当局に引き渡すことを可能にする、「逃亡犯条例」改定案の反対運動の一環として、ネットの住民は去年の中華人民共和国国慶節に、香港各地でデモ集会を呼びかけた。抗議活動がやがて警察と市民の間の衝突に発展し、少なからぬ市民が逮捕、起訴された。

その中、20歳の学生林子浩は暴動罪で起訴され、その公判は前日、地方裁判所で開かれた。裁判官沈小民は警察官の証言が事件当時の状況と齟齬があるとした上、「警察官の証言を自信を持って受け入れることができない」とし、検察側の公訴を棄却した。無罪判決を受けた被告人は即時解放され、傍聴席の歓声の中、親戚や友人と抱き合って、うれし涙を流した。

裁判官:警察官が裁判所に真実を告げなかった

検察側が2名の警察官の証言のみ頼り、公訴事実に立証する証拠品がないため、警察官の証言の信憑性が鍵となるが、2名の警察官のうち、警察官楊運球は自身が被告人に武力を使っていなかったとした上、同僚警察官が武力を使っているか見ていなかったとし、もう1人の警察官、警長(日本警察の巡査部長に該当)林華平は警棒で被告人の上半身を2回殴ったことを認めたが、「比例原則に反する武力は使用しなかった」とした。それに対し、沈小民は、いずれも被告人の頭部の傷について合理的な説明になりえないと指摘した上、2名の警察官のうち、一人が虚偽供述した可能性があり、「裁判所に真実を告げなかった」との判断を下した。

訴状によると、昨2019年10月1日、事件当時19歳だった林子浩は九龍東部の黄大仙東頭村道において暴動に参加したとした。弁護側が証拠として提出した動画映像を見るに、事件当時、楊運球は被告人を地面に押さえつけたが、一人の機動隊員が姿を現し、被告人を乱暴に引きずっていった後、数名の機動隊員が被告人を包囲した。その間、何者かが「殴らないで」と話したのが確認できた。それについて、沈小民は動画撮影者が焦りのあまり口に出した可能性があると述べた。

事件当日の午後4時頃、警察機動隊が追跡を開始し、約10秒後に被告に追いついた。被告の友人が証言した際に、事件当日の午後4時半から5時の間、暗号メッセージアプリ「Telegram」を通じ、被告が警察に取り押さえられた動画を見て、そこには駐車中の消防車が確認できたが、証人の警察官はいずれもその消防車を見ていないと証言した。

検察が「消防車の映像は改ざん」と主張するも 裁判官に一蹴

検察側は、弁護側の弁護に説得力を持たせようとしたため、何者かが証拠動画に消防車の映像を付け足したと主張したが、沈小民は、仮に何者かが動画を編集するとしても、極めて短い時間に決定をし、編集作業に取り組まなければならないとした上、編集する者がどのように証拠動画に関する弁護側の法廷戦術や、証人の警察官は消防車の目撃を否認することについて予め知りえるか疑わしいと指摘した上、赤色の消防車が駐車していた目立つ事象について、当時現場に暫く滞在した証人の警察官2人のうち、1人は印象に残っていないとし、もう1人は見ていない証言としたことに触れ、二人は自分の視界が遮られていなかったことを証明するために、消防車の目撃情報を否認したとの見解を示した。

裁判官:被告人は単なる通行人の可能性

昨年10月9日、警察官呉某は事件現場の周辺に監視カメラの映像を調べた。呉某は監視カメラ映像が見当たらなかったと報告したが、証人喚問の間、弁護側から現場付近にある基協中学校校舎の監視カメラ映像の画面キャプチャを提示されてから、はじめて学校側に監視カメラ映像の提出を求めていなかったことを認めた。沈小民は、被告人が中学校の校舎前の車道に取り押さえられた以上、件の消防車が監視カメラに捉えられたはず、にもかかわらず呉某はその映像を探そうとしなかった上、学校側に事件の重要証拠になりうる監視カメラ映像の提出を求めていなかったことについて、「その対応は理解に苦しむ」と述べた。

また、沈小民は、事件当時、現場の状況が混沌としたことと、武装警察がデモ隊の30~40メートル後方にいたことを踏まえ、背後からデモ隊を追い詰める場合、狙いは走るのが最も遅かった者に定められたはずなのに対し、証言によれば、当時被告は走るのが最も遅かったわけではなく、ただ安全ヘルメットを被っていなかったこと、被告が警察官に取り押さえられたことと、その服装と装備は他の抗議者のと類似していたことに関してしか証言されていなかったため、「警察官の証言を自信を持って受け入れることができない」とした上、被告は単なる通行人の可能性があるため、被告を無罪とし、法廷で釈放される。

被告:嬉しいとは言えず、やっていないことはやっていない

裁判所前にて、林子浩は連日裁判に傍聴し、声援した人々に感謝の意を述べた。判決について、林子浩は嬉しいとは言えないと話した上、「やっていないことはやっていない」と、事件について不平を漏らした。別件の暴動罪容疑で起訴された夫婦二人は、林子浩の無罪判決に嬉しく思うといい、判決は二人の励みになるとも述べた。

楊運球が証言した際に、事件当時、黒色の服を着た者は雨傘で陣形を組んだ他、警察の防衛線に対し煉瓦や火炎瓶等を投げつけたとした。被告人が雨傘の陣形を離れ、警察の防衛線にレンガを投げたとした。被告の弁護人、法廷弁護士関文渭は被告人の特定方法について楊運球に問いただしたが、楊運球は、当時前方に約10人おり、被告人のみヘルメットをかぶっておらず、長髪をしたため、印象に残ったとした。なお、弁護側は「黒服を着た者が見当たり次第しょっ引く」警察の対応について疑問を呈し、誤認逮捕の可能性を問いただしたが、楊運球はそれを否認した。また、事件当時、消防車が正徳街から警察の視界を遮るように走り出したが、それについて楊運球は印象に残っていないとした。

被告人を拘束した警長林華平は証言した際に、事件当時、「黒ずくめ」の者が約10人、警察の防衛線にレンガ等を投げたのに対し、自分が後に前に走り出し、その一人を追いつけたが、その人がヘルメットをかぶっていなかったとした。また、林華平は、その過程において被告人の上半身を警棒で2回殴ったことを認めたが、頭部に殴っていなかったとした上、「武力が過度になるため、我々は理由もなく一人の頭を殴ったりはしなかった」とした。

それに先立ち、弁護側は被告に関する診察報告書を2つ提出した。それによると、被告が警察に殴られたことにより頭部負傷した他、意識を失ったとして、事件当日の夜7時頃、伊利沙白医院救命救急センターに搬送された。医師が診察した結果、被告人は意識がはっきりしていたが、頭頂部の右側に3センチ程度の裂傷、頸部に圧痛、手と両足の膝に擦り傷などがあった。もう1つの報告書は、頭頂部の傷を4センチ程度とした他、被告が翌日退院したと記された。

コモンローでは、司法妨害は起訴可能な犯罪である。司法妨害とは司法の公正性を妨げる傾向または意図を持つ行為、一連の行為またはふるまいを指す。(Halsbury’s Laws of England, Vol. 11(1) (Fourth reprint) ), para. 315)

– 虚偽主張
– 捜査関係者に対する虚偽陳述
– 証拠の捏造・隠蔽・隠滅

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立場新聞(報道)

蘋果日報(報道)

NOW新聞(報道)